処方薬の効果と副作用

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ヒアレイン点眼液の効果・副作用とコンタクトレンズとの相性

ヒアレイン点眼液(一般名:ヒアルロン酸ナトリウム)は病院で処方される点眼薬(目薬)で、1995年から発売されています。

主に保湿作用に優れ、目の乾燥(ドライアイ)などに用いられています。

ドライアイの治療薬の中でもヒアレインは広く用いられているお薬の1つです。その理由はヒアレインの主成分である「ヒアルロン」の保湿力と安全性の高さにあります。

ヒアレイン点眼液はどのような特徴のあるお薬なのでしょうか。またコンタクトレンズの上からさしても大丈夫なのでしょうか。

ここではヒアレイン点眼液の特徴や効果・副作用について紹介していきます。

 

1.ヒアレイン点眼液の特徴

まずはヒアレイン点眼液の全体的な特徴を紹介します。

ヒアレン点眼液は主成分であるヒアルロン酸の保水作用によって、眼に潤いを与え、ドライアイを改善させるはたらきを持っお薬です。

ヒアルロン酸は水を引き寄せる力(保水力)が非常に強い成分で、これにより塗った部位をしっかりと保湿してくれます。また安全性も非常に高く、皮膚に塗ったり目につけたりしても副作用はほとんど生じません。

このような特徴から、ヒアルロン酸は医薬品のみならず、化粧水などにもよく使われています。

ヒアレイン点眼液は目薬ですので、目を保湿する作用を持ちます。そのため目が乾燥しやすい疾患や、目を酷使するような方に役立ちます。

ちなみに点眼薬は防腐剤が入っているものも多く、防腐剤が入っているとコンタクトレンズを装着したままの点眼は推奨されていません。

しかしヒアレイン点眼液のうち、1回使い切りタイプの「ヒアレインミニ」には防腐剤が入っていません。そのためヒアレインミニはソフトコンタクトレンズを装着したままでも使用でき、これもこの目薬の特徴の1つです。

以上からヒアレイン点眼液の特徴として次のような点が挙げられます。

ヒアレイン点眼液の特徴】

 ・主成分のヒアルロン酸が高い保水作用を持つ
・副作用が少なく、安全性が高い
ヒアレインミニはコンタクトレンズを付けたままでも点眼できる

 

2.ヒアレイン点眼液はどのような疾患に用いるのか

ヒアレイン点眼液はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

下記疾患に伴う角結膜上皮障害

・シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼球乾燥症候群(ドライアイ)等の内因性疾患

・術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装用等による外因性疾患

難しい病名が並んでいますが、ざっくりと言えば「眼の乾燥」が生じる状態や疾患に用いるという認識で問題ありません。

実際の臨床でも、眼を保湿する目的で用います。ドライアイ以外でも何らかの理由(お薬の副作用やコンタクト装着など)で目が乾燥している場合にも用いられることがあります。

【シェーグレン症候群とは】

涙腺や唾液腺に対して、自己抗体(自分の組織を攻撃してしまう抗体)が作られてしまう自己免疫性疾患。眼の乾燥や口腔内の乾燥など、乾燥症状を来たす。

スティーブンス・ジョンソン症候群とは】

お薬やウイルス感染をきっかけに、全身の皮膚・粘膜に重篤な紅斑や水泡といった皮膚病変を来たす疾患。敗血症や多臓器不全に至り命を落とすこともある、極めて重篤な疾患。後遺症として失明やドライアイを生じることがある。

では、ヒアレイン点眼液は目の乾燥に対してどのくらい効果が期待できるのでしょうか。

ヒアレイン点眼器を角膜上皮障害の患者さんに投与した調査では、その改善率は、

と報告されています。

 

3.ヒアレイン点眼液の作用機序

ヒアレイン点眼液はどのような機序によってドライアイを改善させてくれるのでしょうか。

ヒアレインの主成分であるヒアルロン酸は、元々眼の「硝子体」と呼ばれる部位に含まれている物質になります。また硝子体以外にも皮膚や軟骨にも含まれていることが知られています。

ヒアルロン酸は無色透明の粘性の物質で、水を保持する力が強く、それによって硝子体や皮膚の形を保ったり、関節の滑りを良くしたりといったはたらきがあります。

水を保持する保水作用から、眼の角結膜上皮障害に対する保護作用を有することが分かり、ドライアイによって角膜上皮がダメージを受けている方へ用いられるようになりました。

ヒアレインには、具体的には次のような作用があります。

 

Ⅰ.保水作用

ヒアルロン酸は保水性に富む物質です。1gのヒアルロン酸で6Lもの水分を保持できる事が確認されています。

この高い保水力によって、塗った部位を保湿し、保湿する事が出来るというわけです。

ドライアイは眼が乾燥してしまう事により、眼の表面である「角膜」が傷つきやすくなってしまっています。

ヒアレインを点眼することで、角膜上皮の保水性が高まり、涙液(なみだ)をヒアルロン酸が角膜上皮で保持してくれるため、眼が乾燥しにくくなり眼が傷つくことを防いでくれるのです。

 

Ⅱ.角膜上皮障害の改善作用

ドライアイでは、眼の表面である角膜が乾燥することにより傷つきやすくなっています。

ヒアレインの主成分であるヒアルロン酸は、保水作用のみならず、角膜上皮にできてしまった傷の治りを促進するはたらきもあります。

ヒアルロン酸がフィブロネクチンという細胞接着分子と結合することで、角膜上皮細胞を接着・伸展させ、傷の治りを促進することが報告されています。

 

4.ヒアレイン点眼液の副作用

ヒアレイン点眼液にはどのような副作用があるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。

ドライアイ治療に用いられる点眼液は、安全性が高いものがほとんどです。ヒアレインも同様に安全性は非常に高く、副作用はほとんど認めません。

ヒアレインの主成分であるヒアルロン酸は市販の化粧水にも含まれていたり、食べ物の添加物にも含まれている物質であるくらいですので、肌に塗ることで重大な副作用が出ることはほとんどありません。

ちなみに、ヒアレイン点眼液の副作用を見た調査では、副作用発生率は1.76%と報告されています。

生じる可能性のある副作用としては、

  • 眼のかゆみ
  • 眼の刺激感
  • 結膜充血
  • 眼瞼炎

などがあります。

いずれも生じる頻度は低く、生じたとしても軽度である事がほとんどです。

 

5.ヒアレイン点眼液の用法・用量と剤形

ヒアレイン点眼液にはどのような剤型があるのでしょうか。

次の剤型が発売されています。

ヒアレイン点眼液(ヒアルロン酸ナトリウム)0.1%  5ml
ヒアレイン点眼液(ヒアルロン酸ナトリウム)0.3%  5ml

ヒアレインミニ点眼液(ヒアルロン酸ナトリウム) 0.1%  0.4ml
ヒアレインミニ点眼液(ヒアルロン酸ナトリウム) 0.3%  0.4ml

ヒアレインには0.1%と0.3%の二種類がありますが、これは含有されているヒアルロン酸の濃度の違いです。0.1%の方は1mL中にヒアルロン酸ナトリウム1mgを含有しており、0.3%の方は1mL中にヒアルロン酸ナトリウムを3mg含有しています。

ヒアレイン点眼液の使い方としては、

1回1滴、1日5~6回点眼し、症状により適宜増減する。なお、通常は0.1%製剤を投与し、重症疾患等で効果不十分の場合には0.3%製剤を投与する。

となっています。

0.1%と比べて0.3%のヒアレインヒアルロン酸の濃度が3倍多いのですが、お薬の量は多ければ多いほど良いというものではありません。

0.1%と0.3%では有効率があまり変わらないこと、0.3%の方がやや副作用が多いことから、まずは0.1%から使用することが推奨されています。0.3%は、0.1%を使っても効果が不十分な場合や症状が重症である場合に限って用いられます。

またヒアレインには1本に5ml入っている通常タイプ(ヒアレイン)と、0.4mlずつに小分けされている「1回使い切りタイプ」(ヒアレインミニ)の2種類があります。

ヒアレインミニは、毎回毎回新しいものを使うため、清潔に使えるというメリットがありますが、量がかさばってしまうために管理に手間がかかるというデメリットもあります。使い切りタイプのため防腐剤が入っておらず、コンタクトレンズを装着したままでも使用することができる点も大きなメリットです。

ヒアレインは作用時間がおおよそ3時間程度と考えられています。これはヒアルロン酸が、角膜に存在する「ヒアルロニダーゼ」という酵素によって分解されてしまうためです。そのため、1日を通して効果を安定させたいのであれば、1日5〜6回という頻回の点眼が必要になります。

 

6.ヒアレイン点眼液をコンタクトレンズの上から点眼しても大丈夫か

点眼液を処方する際に、患者さんから良く聞かれる質問があります。

それは「コンタクトを付けたまま点眼して大丈夫でしょうか?」というものです。

この質問に対する回答は、

となります。

ヒアレイン点眼液には「ベンザルコニウム塩化物」という防腐剤が含まれています。ベンザルコニウム塩化物はコンタクトレンズに吸着してしまうことが知られており、これによってソフトコンタクトレンズを変形させてしまう事があります。

そのためソフトコンタクトレンズ装着時はヒアレイン点眼液を使用するのは避けた方が良いでしょう。

ただし実際としては、1Dayなど短期間使い捨てのコンタクトレンズであればソフトタイプであっても、「コンタクトレンズの上からヒアレインを点眼しても良い」とする先生も多いようです。

これはヒアレインコンタクトレンズを変形させてしまう可能性は確かにありますが、1日で使い捨てるタイプのコンタクトレンズであれば、変形によるトラブルが生じる前にコンタクトレンズを使い終わることになるため、ほとんど問題とならないと考えるためです。

反対に2weekタイプであったり、長く使用するタイプのソフトコンタクトレンズを使用している場合は、ヒアレインコンタクトレンズ装着下では使用しない方が良いでしょう。

このような場合でも、1回使い切りタイプのヒアレインミニであればベンザルコニウムは含まれていませんので、ソフトコンタクトレンズを装着したままでも点眼が可能となります。

 

7.ヒアレイン点眼液が向いている人は?

以上から考えて、ヒアレイン点眼液が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ヒアレイン点眼液の特徴をおさらいすると、

・主成分のヒアルロン酸が高い保水効果を持つ
・副作用が少なく、安全性が高い
ヒアレインミニはコンタクトレンズを付けたまま点眼できる

などがありました。

ドライアイ治療薬の中でヒアレインは、保水効果と安全性がともに高いバランスの取れた点眼液です。多くの方に用いられており、眼の乾燥がある際にまず試してみるお薬として適しています。

また、ヒアレインミニは防腐剤を含まないため、ソフトコンタクトレンズ装着下でも点眼できますので、ソフトコンタクトをつけたまま点眼したい方には向いているお薬となります。